VOL.12 「商標権」を取得する必要性について

VOL.12 「商標権」を取得する必要性について

2021年06月11日 【

今回は商標権を取得する必要性について、大々的に報じられた「ハレノヒ事件」と絡めてお話したいと思います。

 

「ハレノヒ事件」を簡単に説明しますと、サービス利用者がA社に成人式用の着物のレンタルを依頼したところ、予定日になっても届かずに大問題となった事件です。報道によれば、「ハレノヒ」というネーミングは、問題を起こしたA社とは全く関係のない同業のB社も使用しており、B社は勘違いした一部の消費者からクレームや嫌がらせ行為を受けたとの事です。

A社による今回の不祥事はB社に多大な被害を与えたことになりますが、B社は商標権によって被害を事前に回避できた可能性がありました。以下、詳しく説明します。

 

着物のレンタルサービスは「衣服の貸与」に該当します。B社が着物に付随する小物類(例えば髪飾り)もレンタルしていた場合、当該サービスは「装身具の貸与」に該当します。さらにB社は、写真の撮影サービスも行っているかもしれません。

B社は例えば、指定役務として「衣服の貸与」、「装身具の貸与」、「写真の撮影」を指定して「ハレノヒ」を商標登録出願することができます。出願後、特許庁は所定の要件を満たしているかの審査を行い、問題がなければ登録査定を通知し、B社による登録料の納付を経て商標権が発生します。

商標権者となったB社は商標権に基づいて、A社に対して「ハレノヒ」の使用を差し止める訴えを提起することができます。なお、実務上は訴えを提起する前に警告書を送ることが殆どであり、複数回に亘る書面のやりとりを通じて何らかの合意に至らなかった場合、訴訟に移ります。

仮にB社がA社に対して「ハレノヒ」の使用を差し止める訴えを提起したならば、よほどのことがない限り当該訴えは認められます。差し止めを受けたA社は「ハレノヒ」のネーミングを使用できなくなり、別のネーミングに変更しなければなりません。因みに、B社に逸失利益が生じていた場合は、損害賠償が認められる可能性もあります。これにより、B社は今回のような被害を回避することができたかもしれません。

実は、「衣服の貸与」を含む役務を指定して、「晴れの日」を商標登録している企業が既に存在します。この企業が上述したB社と同一かは定かではありません。

 

他人による侵害行為を見つけ出すのは大変で、気づかないケースが多いです。

インターネットが普及した現代では、ひと昔に比べれば侵害行為の発見が容易になったと思いますが、商標権者は少なくとも同業者が似たような商標を使っていないか定期的にチェックされることをお勧めします。

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