ピコ太郎およびPPAPが商標登録される可能性(前編)

ピコ太郎およびPPAPが商標登録される可能性(前編)

2017年02月2日 【 商標権

ここ最近、正当な権限を有しない第三者による「ピコ太郎(正確には「PIKOTARO」)」や「PPAP」等の商標登録出願が問題になっております。そこで、これらのネーミングが商標登録される可能性について、想定される拒絶理由を挙げながら説明したいと思います。

まず、「PIKOTARO」についてです。

 

「PIKOTARO」に対して想定される拒絶理由

①3条1項柱書(使用意思)

使用する意思がない商標は、この条文で拒絶されます。「PIKOTARO」の出願人(「本出願人」と称します)は使用する意思を有していないことが想定されます。しかしながら、何らかの指定商品・役務について本当に使用した場合は、その使用した範囲に限りこの条文で拒絶できなくなります。本出願人が対策できる以上、全ての指定商品・役務を拒絶できる可能性は低いと思われます。

 

②4条1項7号(公序良俗)

公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標は、この条文で拒絶されます。

過去に「バロンドロール」や「ダリ」がこの条文で拒絶されたことがあります。

世界的に有名になったピコ太郎ご本人と全く関係のない本出願人による「PIKOTARO」の出願は、まさにこの条文にあてはまると思います。なお、本出願人は「PIKOTARO」の表記で出願していますが、「ピコ太郎」と称呼が事実上一致するので、表記の差異は当該認定に影響を及ぼさないものと考えます。

 

③4条1項8号(他人の氏名又は名称等)

他人の氏名、名称や著名な芸名等は、この条文で拒絶されます。

本出願人にとって「PIKOTARO(ピコ太郎)」は他人の著名な芸名に該当します。

ただし、著名の程度は商品又は役務との関係を考慮するため、例えばピコ太郎が指定商品「菓子」に全く関与していない場合、その範囲についてはこの条文で本当に拒絶できるのか断定し難いです。

また、ピコ太郎ご本人が承諾すれば問題ないのですが、現実的にはあり得ないと思われます。

 

④4条1項11号

類似商標が既に出願されている場合は、指定商品・役務と同一又は類似する範囲で、この条文によって拒絶されます。

「PIKOTARO」が出願される数日前に、異なる出願人が「ピコ太郎」を既に出願しています。

この異なる出願人は、「ピコ太郎」の商標権を取得することについて正当な権限を有していると考えられます。

したがって「PIKOTARO」は、「ピコ太郎」が指定する指定商品・役務と同一又は類似の範囲において、この条文で拒絶されると思われます(前段階として商標法第15条の3の規定による拒絶理由が通知されます)。

 

⑤4条1項15号、19号

これらの条文は、他人の業務に係る商品又は役務の存在の有無、世に出ている「ピコ太郎」が商標として周知になっているか否か、等がポイントになります。

ピコ太郎は著名な芸名ではありますが、商標として少なくとも周知であるかについては疑問が残ります。

したがって、これらの条文での拒絶は難しいのではと思います。詳細は「PPAP」の回でご説明したいと思います。

 

(結論)正当な権限なき第三者が出願した商標「PIKOTARO」は、少なくとも4条1項7号、4条1項11号を理由に商標登録されないと予想します。

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