VOL.10 「実用新案」について

VOL.10 「実用新案」について

2021年05月28日 【

今回は実用新案についてご紹介します。

実用新案法は小発明(法律上は「考案」と呼びます)を保護する制度といわれることがあります。実用新案は特許と比較され易い知的財産ですが、その理由としては保護対象(※1)、作成する書面等が一部で共通することが挙げられます。

特許と実用新案の相違点はいくつかありますが、最大の相違点は実体審査の有無です。すなわち、特許は新規性の他に、創作非容易性といった非常にハードルの高い要件を満たす必要があります。これに対し実用新案はモノとして特定されていればよく、例えば登録実用新案請求の範囲を「取手を備えたティーカップ」として出願した場合でも権利が付与され得ます。ここで注意しなければならないのは、「取手を備えたティーカップ」で実用新案登録がなされても、この権利は無効理由(新規性無し)を有しており、第三者に対する権利行使が制限されることです。権利行使を強行すると、逆に損害賠償請求を受けてしまうリスクがあります。

それでは、特許ではなく実用新案を選ぶメリットは何か?一般的には次のようなことが言われております。

 

・書類の内容によほどの不備がない限り、きわめて高い確率で実用新案権を取得できる。

・「実用新案登録第〇〇号」のような文言をパッケージに付して商品を販売することができる(宣伝広告に活用可)。

・特許に比べて権利取得のための費用が安い。

・「実用新案権取得済み」をアピールすることで、第三者への一定の牽制になる。

 

実用新案は業界的にメリットよりもデメリットの方が大きく、相談者に積極的にお勧めしづらいという傾向にあります。私もこの考えに近いです。しかしながら、実用新案を有効に活用されている方も実際にはいます。私は特許庁の支援事業として、長崎県で知財相談に応じる機会が多いのですが、例えば実用新案権をお持ちの相談者が第三者とライセンス契約を結んで多額の契約金を受け取った話を聞いたことがあります。実用新案権を取得したいという相談自体も多いです。

海外に目を向けると、中華人民共和国では同日に出願した同一客体の特許権と実用新案権の併存が認められております。また、ドイツでは実用新案権自体が比較的有用であり、積極的に活用されております。

特許権の取得は難しそうだが何かしらの権利が欲しいという方は、実用新案権という選択肢があることを知って頂ければと思います。

 

(※1)特許では「物」と「方法」が保護対象ですが、実用新案では「方法」は保護対象外です。

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