VOL.29 特許に関する身近なトピック

VOL.29 特許に関する身近なトピック

2021年10月8日 【 】

今回は特許に関する身近なトピックをご紹介します。

IT企業であるX社が今年1月、RFIDタグを用いたセルフレジに関する特許を取得しました(特許第6469758号)。RFIDとは、電波を利用して商品に付けられたRFタグを非接触で読み書きすることができる技術です。X社が取得した特許を簡単に説明すると、衣服などの商品を収容する箱(収容部)に、外部への電波放射を低減させる機能を設けた、というものです。もっと簡潔に説明すると、客が購入したい複数の商品をその箱に収容するだけで、合計金額が算出されて会計ができるというものです。この特許が出願される以前にも、RFIDタグを用いたセルフレジに関する技術は存在していましたが、RFIDの電波は10m近く飛ぶこともあり、これにより近くにいる他人のバーコードを誤って読み取ってしまうという課題がありました。この課題を解決するため、箱に蓋をすることで電波漏れを防ぐ技術が知られていましたが、X社の特許は蓋をすることなく電波漏れを防ぐことができるという特徴があります。

 

X社が保有するこの特許を巡り、X社とY社(某大手衣料品メーカー)との間で係争が生じているというニュースが最近になって報道されました。もともとX社とY社は取引関係(X社はY社の下請企業)にありましたが、Y社がX社に無断で上述したセルフレジを導入したことで、X社がY社に対し差し止め請求訴訟等を提起したというものです。これに対し、Y社はX社が保有する特許権に対して、無効審判を請求したという報道もなされております。特許訴訟における典型的な攻撃および防御の手法です。X社の試算では、当該特許のライセンス料は年間約2.9億円になるとのことです。

 

ひと昔前までは、特許は出願書類の記載不備等を理由に無効となるケースが多くありましたが、これでは特許を取得する意味がないという多くの批判を受け、近年では特許が無効になるケースが格段に減りました。どのような判決、審決がなされるかは分かりませんが、Y社の下請企業であるX社がY社を訴えたことで、知財業界では非常に大きな注目を集めています。

 

特許は企業の規模によって優劣がつくわけではありません。特許は巨大企業と戦うための武器になります。皆様の会社でも是非、特許をはじめとする知的財産権の活用をご検討ください。

 

※X社とY社の企業名はメディアで大々的に報道されていますが、本トピックでは開示する必要性に乏しいので敢えて伏せております。

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