「白い恋人」vs「面白い恋人」

「白い恋人」vs「面白い恋人」

2022年10月7日 【 】

今回は「白い恋人」と「面白い恋人」の過去に起きた事件についてお話したいと思います。

「白い恋人」は石屋製菓によって生み出されたお菓子(ゴーフレット)で、日本ではとても有名な商品です。「面白い恋人」は、吉本興業等が「白い恋人」のパロディとして製造・販売したお菓子(同じくゴーフレット)です。

今から約10年前、石屋製菓が、「面白い恋人」の製造・販売に関与した吉本興業(他2社)に対し、商標権侵害および不正競争防止法に基づいて商品の販売差止め等を求める訴訟を札幌地方裁判所に提起しました。

結論を先に申しますと、この訴訟は「面白い恋人」のパッケージ変更、関西の6府県に販売地域を限定することで和解が成立しました。個人的にも、この訴訟は以下の理由で和解が妥当ではなかったのではと思います。

まず、商標権侵害が認められるための要件として、同一又は類似する商品に対して、同一又は類似する商標を使用することが必要になります。不正競争防止法で定める不正競争も、少なくとも商品等表示(ここでいう白い恋人と面白い恋人)が同一又は類似する必要があります。

比較対象となる商標が類似するか否かの判断は、称呼(音の響き)、外観、観念の何れかが相紛らわしいか否かに基づいて行われます。

本件でポイントとなるのは称呼です。「シロイコイビト」と「オモシロイコイビト」は、この業界の言い回しによれば語感音感が異なります。「オモ」と「シロイコイビト」に分ける積極的な理由もないので、全体観察すると非類似です。

実は、吉本興業(実際は株式会社吉本倶楽部)は「面白い恋人」を商標登録出願しましたが、有名な菓子「白い恋人」の存在を理由に公序良俗違反(商4条1項7号)で拒絶された経緯があります。別の視点から考察すると、特許庁は「白い恋人」と「面白い恋人」は類似しない、と判断しました。すなわち、双方の商標が類似していない以上、商標法上の侵害行為は成り立たないことになり、最後まで争っても石屋製菓側の主張は認められなかったかもしれません。この点は、不正競争防止法もほぼ同じです。

では、石屋製菓が他に取り得た措置はなかったのかというと、1つ考えられたことがあります。それは、石屋製菓が「面白い恋人」を出願することです。仮に出願していた場合、自身の著名な菓子を理由に公序良俗違反とはならないので、石屋製菓は商標登録できていたかもしれません。石屋製菓が仮に「面白い恋人」を商標登録できたならば、吉本興業は「面白い恋人」という菓子を販売できなかったかもしれません。

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